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第4期のリモート研修③を実施しました!

11月21日(日)にリモート研修③を実施しました!前回のリモート研修は、事業アイデアを具体化するためのビジネスモデルの作り方について学びながらの実践でした。その後、3週間弱をかけて各社ともにチーム内で自社のアイデアに学びを適用しながら議論を交わしてきました。本研修ではもう一歩踏み込んだ具体的なアイデアとパイロット版ビジネスモデルを共有。来月に控えた最終発表に向けて、どのチームも他社のアイデアに真剣に耳を傾けていました。

考えてきた新規事業のアイデアと実現のためのロードマップを見せながら、各チーム、山口氏からメンタリングを受けました。豊富な経験に裏打ちされた的確なコメントに加え、アイデアをどのように語り、スケールするかといったセオリーについてのアドバイスもありました。今回のレポートでは、これまでProject180の第4期で実施してきた研修と、新規事業の全体像をどう設計すればよいのかについて、山口氏から頂いた言葉をもとに改めて整理したいと思います。

入り口:誰と組めば美しいストーリーが始まるのか?

これは、研修の前半で自社の棚卸しを始め、ステークホルダーを洗い出すプロセスから導ける事業アイデアの出発点です。一番はじめの集合研修①の中で「人権と搾取」というキーワードが新規事業を再定義するためには不可欠だと学んだのは、記憶に新しいのではないでしょうか?これまで課題を抱えながらも見過ごされてきたステークホルダーに今一度目を向ければ、会社が目指す未来へと一緒に向かいたい人たちがかならずいるはずです。ストーリーの美しさは、これまでないがしろにされてきた、彼らを表舞台に上げることでしか生まれないといえるでしょう。

社会全体にもたらすインパクトがパーパス(存在意義)、自社が望む「こうなりたい」という理想がビジョンであることは、既にレクチャーの中でお話してきました。しかし、山口氏の前回のレクチャーをもとに考えれば、社会課題を直接的に解決することは、決して見過ごしてはならないはずのステークホルダーの存在を希薄にしてしまいます。かといって、彼等に直接働きかけることは、ビジネスとしてスケールする機会を逃してしまい、根っこにある問題を置き去りにしかねません。

ではどうするのか。新規事業を考える上で最も重視すべき対象である「業界」を通して、その両側にある顧客と社会課題にアプローチする必要があります。

顧客の課題は業界の課題として受け止めたうえで新規事業を捉えれば、これまで見過ごされてきたステークホルダーと既存事業の間にある壁に穴を開けることができます。新たな商品でもサービスでもない、見過ごされてきたステークホルダーとマッチする潜在的な業界を発見することが何よりも有効であるという前回の学びは、どの企業も十分に意識されていたのが印象的でした。

また、新たな業界をつくれれば、新規事業創出における最初の困難「キャズム」を乗り越えることにも繋がります。自社で掲げるビジョンを閉じるのではなく、外へと開いていく。キャズムとは、新規事業創出において初期に陥る溝のこと。はじめのストーリーがいくら美しくても、後に続く流れを生まないような、一過性のアイデアであってはいけません。

スケール:模倣される仕組みをつくり、育てられる側にまわる

現代のビジネスを考える上で、外してはならないポイントと山口さんがおっしゃっていたこの言葉。今回の研修で多くの熊本企業が自然と意識されていたことです。従来は自社の考えた仕組み、つまり新たな業界をつくるうえで骨子となるアイデアを外へ出さないことで、コピーされないように努めるのが定石でした。スケールするにしても、フランチャイズのような形でライセンスを売り、そのモデル自体は大本の企業が開発コストをかけて独自に発展させていました。しかし、模倣されるような仕組みを作ることで、常識的に考えればライバルとなる企業をも仲間に引き入れていくことができると山口氏は言います。

模倣されることで、自分たちの専門外や地域外で起こっていることを把握する。それらをデータとして活用し、ビジネスモデルを常にアップデートし続ける。1社が開発コストの全てを引き受けるのではなく、ネットワークを形成することは、集中から分散へと舵を切る現代の潮流とも符合します。

Project180が重視しているビジョン・ドリブンな新規事業の創出においては特に、いかに模倣を前提として<仲間=パートナー>を含んだ事業案が練られているかがポイントになります。一方で、「ビジネスの型をつくったとしても、資本面で有利な大企業に取って代わられてしまうのではないか?」という疑問もあるでしょう。しかし、大企業やビッグベンチャーと言われるようなスピーディな事業構築が求められている相手にとって、開発コストをかけずに新たな市場に参入できることは大きなメリットです。出資してもらうことも1つの方法で、その際も主導権が移らないような工夫(出資額を低く留める、実物での供給にするなど)をすれば相手がどれだけ巨大であったとしても、互いに最大のメリットを享受することができます。

模倣される前提で新たな業界を中心に自社を据え、ビジョンに共感してくれる周囲の力を借りながら掲げたビジョンへと向かっていく。自ら育てられる側に回ることを念頭に全体像を設計することは、大企業でもなければシリコンバレーの破壊的なイノベーターでもない、第3の道として大いに可能性があることを実感しました。

着地となるパーパスやビジョンが壮大であればあるほど、個の力だけで到達するのは困難です。一方で、確かな見通しが立っていなければ、社会に与えるインパクトは小さくなる。そうすると今度は、何のためにビジネスをしているのか考え、ステークホルダーを探り、そして振り出しに戻ってしまうかもしれません。新規事業を考える上で一度は遭遇する、堂々巡りの事態を避けるためには、自社で閉じない仕組みを作り、スケールするために必要な仲間を積極的に引き入れていくことが重要なのかもしれません。

ゴール:一連のストーリーは、相手に合わせて語り方を変えていく

美しい新規事業の始まりと、スケールさせていく模倣の仕組み。そして最後に忘れてはならないのが、業界を中心として顧客と社会双方の課題を貫く1つのストーリーが紡げているかどうかです。新規事業とはビジョンに向かうための1つの実践であり、通過点です。今に固執せず、常に先に見据えたゴールを意識することは、仲間が多くなればなるほどコントロールが難しいかもしれません。

だからこそ、仲間となる相手によって一連のストーリーの語り方は変える必要があります。前回の研修の最後で山口氏に提案していただいた、チラシという暫定的なアウトプットはそのためのエクササイズです。詳細までは書ききれないからこそ、アイデアのコアはどこなのかが自覚でき、より洗練されていきます。伝える相手、市民なのか同業者なのか、それとも大企業のCSR担当部署の人間なのかによって最大限のメリットが感じられる形として提示し、語り方は柔軟でありながらも、芯の通った1つのアイデアへと鍛錬を繰り返す。容易ではありませんが、繰り返し、粘り強く続けていくことがなによりも重要です。

相手によって語らないことがある一方で、必ず語るべきステークホルダーもいます。彼らがストーリーの主人公であり、はじめに示した「美しいストーリーの主役」です。

事業創造における入り口とスケール、そしてゴール。これらはすべて繋がっていて、どれも欠くことができない必須要素であることを学んだ最後の研修でした。

来月はいよいよ最終発表会です。欲しい未来を語り、そのために必要なアイデアをとことん突き詰めて考え、1つの事業案として提示していただきます。長期的なビジョンを持ち、その手前で繰り出される新規事業アイデアに完璧さは必要ないかもしれません。熊本の未来ひいては地域の未来が垣間見える、そんなアイデアにすべく、のこり3週間のラストスパートが始まります。

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