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第4期の集合研修②を実施しました!

10月23日と24日の土日2日間をかけて、第4期の集合研修②を熊本県人吉市で実施しました!9月に実施した1回目の集合研修ではおよそ半数がオンライン参加でしたが、10月にはようやく緊急事態宣言が明けました。引き続き十分な感染対策をした上で、今回はほぼすべての参加者が現地に集合。人吉市は昨年の水害で甚大な被害を受けた地域です。実際の街並みと復興に向けた数々の取り組みを知り、多くのメンバーとも対面できたことで、議論はより深いレベルへと向かったようです。

1日目はまずはじめに、今年の7月にオープンしたばかりの観光拠点施設「HASSENBA」代表取締役の瀬崎公介氏からお話を伺いました。天草生まれで、父親が創業したボート免許教室を引き継ぎ、現在は「株式会社シークルーズ」の代表でもあります。

瀬崎氏はこれまで、天草三角線をJR線と連結し、船と列車を同じデザインで統一するなどの画期的な試みを通して、天草地域に新しい観光の流れを作り出してきました。1回目の集合研修1日目では、第4期参加企業の1つである「藍の村観光株式会社」が運営する「リゾラテラス」を訪れましたが、そのすぐ隣に2019年、「mio kamino AMAKUSA」をオープン。九州産交と協同で市からの委託を受けて運営されています。

その手腕を買われて、100年の歴史がある「球磨川くだり株式会社」の代表に就任。しかし10年間で8回の赤字決算、イマイチなホスピタリティが不評で、周辺の旅館でさえも球磨川くだりは勧めないという共通理解があったそう。今では考えられないことですが、6人集まらなければ船は出ず、0歳の赤ちゃんでさえも有料だったとか。さらには、昨年の水害によって一度は全てが水に流されました。そんな絶望的な状況が続いていたとは到底信じられないほど、当日は若いカップルや子供連れで賑わっていたHASSENBA。

「経済の復興なくして、被災地の復興はありえません。最もだめなことは補助金に頼ること、稼ぐことがなによりも大切です」

そういい切る瀬崎氏の声には、スタッフや地方議会からの反発を乗り越え、地域を立て直すというただ1つの目的に向かってひた走ってきたからこその説得力がありました。お話を聞いたあとも参加者からは次々と質問が挙がり、そのスピード感やタフネスから学び取れることは非常に多い、貴重な時間でした。

HASSENBAを後にして向かったのは、今回の宿泊先である「ホテルサン人吉」です。代表取締役兼女将の村田優子氏からは、近年特に力を入れているというSDGs関連の取り組みを丁寧にご紹介頂きました。

遮熱シートを使い、エネルギー効率を優先した客室の改善。水害を経験したからこその機器配置と備蓄の徹底。従業員、さらには顧客を巻き込んだ環境配慮への行動変容。

世間一般でよく聞く言葉であればあるほど、一見理解できているようで、実はよくわかっていないということは往々にしてあります。しかし、村田氏の言葉を借りれば、どれも以前から実施したいと思いながら手がつけられていなかった部分であり、SDGsありきではないことが伝わってきました。

身近だからこそ見過ごしてきた自社の課題は、いくら小さくても放っておいたところで何も変わりません。社会的な課題を自社に適用して捉え直し、アクションし続けることを地で行く女将。社会的な課題を自分たちに引き寄せつつ、そこにステークホルダーを巻き込んでいく姿勢には見習う部分も多かったかと思います。

膨大なインプットと久しぶりの県外移動で疲れた方もいたかもしれませんが、そのままホテルでグループワークをスタートしました。ディレクターの田村からレクチャーがあり、休憩を挟みつつも3時間みっちり議論。美味しい晩ご飯を頂きながら、どのチームも引き続き話し合いを続けていた姿が印象的でした。

1日目の疲れなどいざしらず、朝早くからヨガで心を落ち着け、次の研修会場まで歩いていく余裕も感じられた2日目の朝。

会場は、かつての国民宿舎を活かし、球磨川の絶景を望める総合交流拠点「くまりば」です。人吉について学べ、観光に関する資料を数多く取り揃えるだけでなく温泉も備える同施設は、コワーキングスペースあり創業支援ありの、人吉屈指のビジネススポットでもあります。まずは1日目の議論を踏まえて、前回の宿題だった「自社の事業ビジョン」について、各チームに共有していただきました。

日々の無意識に今一度目を向ける、教育という事業の可能性。時間によって来る人、コミュニティの違いが生む新しい価値。なにをするかではなく誰を呼ぶか、フォーマットを崩していく。

これまでの議論を踏まえて、自社の方向性がようやく見え始めてきた会社もちらほら。しかしそこで満足せず、さらにもう一度疑問を投げかけ、さらに高い精度で事業を練り上げていきます。ときにはメンターから鋭い指摘も。

「ファンと消費者は違う」「ワーケーション?5年後には終わるんじゃない?」「幸福の追求とかいうけど、成長が大事ってこともある」「活用したいデータはどこにあって、それはすぐ使えるものなのか?」

メンターから投げかけられる言葉の数々に、一度は県外パートナーとともに紡ぎあげた事業ビジョンの根底が揺らぐ場面も見られました。少なくない企業が「リテラシー」という言葉を使って事業ビジョンを語っていた背景には、「無関心」への問題意識があるのかもしれません。しかし、リテラシー向上の議論はどこにも向かわないことも確かです。

里山。気候変動。孤独。他にも社会課題に関してパッと思いつく言葉はたくさんあります。研修の最後でメンターの鈴谷氏から一言。

「物分かりの良いフリをしないでください。同意ではなく質問。分かるまで問い返す。そうでなければ議論は前に進みません」

Project180の主役は紛れもなく熊本企業です。しかし、彼らが次の時代のつくっていくためには、県外パートナーがアンラーニング(かつての学びを捨てること)することが不可欠、それが今回の研修における一番の気付きかもしれません。

地方と都市、更には業種によっても、普段耳にする言葉の数々には驚くほどの違いがあります。ある状態、課題を抽象的な言葉でまとめあげてしまうことは、理解のフレームに入れ込むということ。議論を身のあるものにしていくためには、絶えず問い返し、既存のフレームの外側で対話を繰り返していく必要があるのかもしれません。

とことんまで具体と実態に向き合う。そこからしか自社の課題もステークホルダーも見えてはきません。事業ビジョンとなればなおさらです。

次回は2回続けてのリモート研修。事業アイデアを一つに絞り、洗練させていくフェーズに入ります。第4期のProject180もいよいよ後半戦。皆さん、顔が引き締まってきたようです。

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