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チーム活動レポート⑥ 金剛株式会社

2019年度のProject 180のそれぞれのチーム活動について「チーム活動レポート」シリーズでお伝えしていきます。6本目は、金剛株式会社チームの皆さんのふりかえりです。(取材は2020年1月に行いました)


アーティストを支援する仕組みをつくる

金剛株式会社の企業理念は「安心と先進で社会文化に貢献する」。金剛チームは、社会文化をつくりだす人であるアーティストの支援をテーマに定め、事業づくりに取り組んだ。

金剛の強みを深掘りする

プログラムの一番最初に金剛の新しくできたばかりの工場をチームの皆さんで訪問していましたが、その時の印象はどんなものでしたか?

井手口: 行ってみると郊外にドカーンと建物が現れて、迫力がありました。新しくできたばかりということで、カッコ良かったです。一緒にうかがったメンターの山田遊さんも「やっぱりモノだよねぇ」と言って、展 示されている製品を触りまくってましたよね。

山下: ちょっとした工夫からイノベーションを生んでいる実例をたく さん見せていただいて圧倒されました。たとえば、図書館でおなじみ の移動が滑らかな丸ハンドル式の移動棚だったり、他にも「傾斜スラ イド棚」は非常にシンプルな仕組みにも関わらず、地震の際の図書資 料の落下を阻止し、図書資料のダメージ軽減やケガ予防などの効用 がしっかりとあり、印象に残っています。図書館や博物館・美術館と いった文化施設を特集した雑誌をつくっていたり、図書館の現場へ 働きにいったりと、徹底的に現場とのコミュニケーションを取りなが ら、課題発見を繰り返しているのだろうと想像しました。

興梠: ものづくりというハード面に強い会社という印象でした。でも、その後、国会図書館やアマゾンの倉庫の例など、率先して新しい領 域にチャレンジしているというお話もうかがって、仕事の進め方とか企業文化とかソフト面にも先進性がある会社なのかもと思うようになり ました。

事業アイデアについては、どのようにチームの議論が進んでいったのでしょうか?

朝野: いろんな可能性がある「何でもあり」の状態で議論がスタート したのですが、紆余曲折をへて「アート」の領域にチャレンジしてみよう ということになりました。理由のひとつは、弊社の企業理念にありま す。「安心と先進で社会文化に貢献する」という企業理念があるので すが、「社会に貢献する」ではなくて「社会文化に貢献する」となっているので、文化を守ったり、文化をつくったりすることに取り組んでいくべきだという話になりました。

興梠: 金剛さんは図書館だったり、文化財の保管だったり、文化を「守る」ことはすでにしっかりやられているので、文化を「つくる」方向 に貢献できたら、さらに企業理念が光り輝くのではないかと。

アートに切り込んでいくというところはみんなで合意していて、そこはブレなかったですよね。でも、メンバーそれぞれがどんどんアイデアがでてくるタイプだったので、 まとめるのが大変なところはあったと思います。

山下: 大変でしたね(笑)。それぞれが言いたいことを言って、収拾がつかなくなってくるとメンターのアドバイスを判断基準にしながら決めていく感じでした 。普段の仕事では自分が言いたいことを言って、リードしながら決めていくことが多いので、今回はみんなで言い合って決めていく感じが新鮮で面白かったです。

井手口: ぼくも、みんなで模索していく感じが新しかったです。メンターのアドバイスもみんな違うこと言いますからね(笑)。チームでアドバイスのここの部分をパクろうと話したりして、混沌とした議論を楽しめるメンバーばかりだったのも良かったです。

朝野: 私はそんな皆さんの議論のやり方そのものが新鮮でした。こんなに言いたいこと言い合ってても、険悪な関係にもならず、なんとかまとまっていくものなのかと。カタカナワードが多かったのは最後まで慣れませんでしたけど(笑) 。

実際に、どんなアイデアなのでしょうか?

朝野: ひとことでいうと「アーティスト支援事業」です。日本は経済的 にGDP世界第3位を誇るにもかかわらず、アート市場は、世界の3.1% と経済規模に比べるととても小さいものです。アーティストとして食べ ていくことも難しいです。そこで、美大の学生や若手アーティストが、よ りつながりを作りやすく、作品を評価されやすくすることで、自立しやすくするという事業アイデアです。

山下:自分自身も、アートの世界のフィールドワークを行ったり、アー ティストやアーティストの卵である学生に直接インタビューすることで、実際にすごい才能があるなと自分でも思うような子でもアーティ ストとして生きていくのは難しいという現状を知り、これはなんとかしなくてはならないという思いが強まっていきました。

井手口: 若手アーティストの作品が知られるだけではなく、アートを 買う人、楽しむ人が増えることも大事だということで、企業向けの絵 画レンタル・販売サービスとして、作品を定額でレンタルしたり、気に入ったら購入できるような仕組みを整える構想もあります。まさにアー トの裾野を広げていくことにつなげたいです。

プログラム修了後に東京で社長に向けたプレゼンを行ったと伺いました。反応はいかがでしたか?

朝野: そうなんです。最終プレゼンの日に社長の日程が合わず、先日 やっと東京で社長へのプレゼンを行いました。「これはやっていかなくてはならない事業だと思う」とも言ってもらえたので、今後社内のプロジェクトが立ち上がっていく可能性があります。

山下: 今回の事業アイデアはマネタイズのところが難しく、目先の数 字をどのくらい考えておくべきなのかというのはチームでいつも悩んで いたところだったのですが、社長に実際に会ってみて、お金のこともも ちろん大事だけれど、アートや社会文化の裾野を広げていくという本 質的な課題に関心がある方なのだということが伝わってきたので、今 後につながっていきそうだなという感触です。

会社の皆さんにも理解いただきながら、外の人も巻き込みながら、 プロジェクトが立ち上がると良いなと思います。今回のサポートメンバーの3名でも、何らかの形で関わっていけたら良いねと話しています。

Team Member
朝野 晃司 (金剛株式会社 総務・人事チーム)
山下 福太郎 (サポートメンバー)
井手口 亮 (サポートメンバー)
興梠 智紀 (サポートメンバー)

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